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中川義雄の政治信条
平成13年3月
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「大変な時代」
今は、20世紀から21世紀への分水嶺にあり、この時を確かに乗り越えるためには、過去を精査して、悪いものは清算し、良いものは継承し、それを発展させなければならない非常に大切な時にあります。
確かに「大変な時代」といわれ、今や我が国は、重い文明病に侵され危機的な状況にあります。第二次大戦後、廃虚の中から奇跡の復興を遂げて、米国に次ぐ世界の経済大国に上り詰めた我が国ですが、戦後世界の枠組みであった冷戦構造が崩壊し、新しい国際関係の展開に立遅れ、変化する内外情勢に対応出来ず、大転換を余儀なくされています。
その意味で正にピンチですが、問題はこのピンチの背景・構造を根底から冷徹に認識して、このピンチをチャンスとして新たな飛躍の方向を探求し、その方向へ向けた抜本的な政策転換を図るならば、新世紀へ向けて我が国は、明るい展望を切り開く事が出来ます。
なぜ今大変なのか
我が国は、敗戦後の廃虚と連合軍占領下からスタートして、戦後半世紀以上を経て、復興期に続く、経済の目覚しい急成長によって世界第二の経済大国になり、二度に亘る石油危機もクリアして、バブルの膨張と崩壊の道を辿ってきました。
この間、東西対立、冷戦構造の中で、我が国は自由世界の一員として国際関係を維持してきました。しかし、ヤルタからマルタへ、ベルリンの壁は崩壊し冷戦構造は解消したのであります。
また、この半世紀の間に特に先進諸国の目覚しい工業化―大量生産、大量流通、大量消費、大量廃棄などにより地球環境を著しく損ねてきました。
こうした変化によってもうこれまでの我が国の社会システムは対応できず、機能不全を起こしております。このままでは、社会システムの転換する事無しに立ち行かなくなっています。
どう大変なのか〜バブルの崩壊
その第一は、政治におけるバブルの崩壊であります。 それは宮沢内閣時代の自民党の分裂に始まり、実にこの10年間に10人の総理の交代がありました。このような短期内閣のもとでは、しっかりとした政治を行うことは出来ません。これは主に自民党が戦後一貫して政権を担い、権力に馴れきったこと、世界の冷戦構造を背景として形成された五十五年体制と言われた政治体制をだらだら引き継ぎ、冷戦終了後の世界の政治情勢の変化を見誤り、根本的な内政・外交の転換が行われずに推移してきたこと、物的繁栄に酔い日本の人心の散乱に気付かなかったこと等に起因すると思います。
この間全く無為だったかと言えば、確かに政治改革が提唱され、小選挙区制などの改革が行われてきました。しかし、この間培われてきた政、財、官の癒着が汚職の温床となり、政治に対する不信感が予想を遥かに越えて高まり、無党派層の激増となりました。
このような民心の変化を見誤り、小選挙区制の導入等の政治改革や目先を変える安易な人事によりこの危機を乗り越えようとしたことはまさに誤りであります。
いまこそ政治の思い切ったオペレーションの実行こそが我々政治家に与えられた最も大きな責務であり、急務であると思います。
第二は、行政におけるバブルの崩壊であります。この間、一方では官僚機構の肥大化を招き、権力の中央集中化が形成されました。
常に指摘されているように、行政の中央集権構造、縦割りの画一的な規制と権限行使、行政権限の肥大化、情報の非開示、不透明性等が根強く、糊塗彌縫するのみで、問題解決を先送りしてきました。その典型は、最も権力を集中してきた大蔵省が世界の流れに即応した金融システムの改革を進めることなく、適切な改革と対応が遅れ、「都市銀行は破綻させない」との度重なる明言にも拘わらず、拓銀が破綻に追い込まれ、四大証券の一つ、山一證券が自主廃業し、保険業界でも日産生命が破綻するなど金融政策の失敗が明らかとなりました。
大蔵省のみならず、日銀の汚職、厚生省のエイズ薬害事件、厚生事務次官の汚職、建設省、農水省、更には防衛施設庁、防衛庁の制服組の汚職などが相次いで摘発を受けております。更に最近では、外務省の一官僚が総理の官房機密費を数年に亘り操作し、十億円単位の公費を私物化すると言う、正に、夢想だにできない事件、KSDへの官僚の天下りと大物政治家の関与等々、行政に対する国民の不信は正に怒り心頭に達しており、政治不信に輪をかけております。
省庁再編など、戦後最大と言われる行政改革を実行しましたが、今、政治家に求められているのは、公務員数の一大削減と国の将来に対する重い使命感を持った公務員倫理の確立など行政改革に魂を入れる事であります。
第三は、経済におけるバブルの崩壊であります。前述しましたように、大蔵省や日銀の金融政策の失敗が明らかになりましたが、その後も金融不安は止む事なく、長期信用銀行や日本債権銀行などの破綻となって、我が国の信用を深く傷つけ、内外の不信をかって、日本経済全体に、またそれはアジア経済、世界経済へも大きなダメージを与えるにいたりました。これは、金融政策の失敗も大きかったが、それにも増して経済界の責任も重いとおもいます。
日本人は、昔から「お金」のことを「お宝」と呼んで大切にしてきたこともあり高い貯蓄率を誇ってきました。しかし、銀行は、国民から預かったこの大切な「お金」を株や土地など投機のため正にバブル、湯水のように使うといった重大な誤ちを侵しました。今回の長期の不況は、このバブルが崩壊し、正にデフレスパイラル、株価や地価が谷底まで下落したため、銀行の不良債権が莫大に膨れ、経済活動の大動脈である銀行の機能が果たせなくなったことが最大の要因であるとおもいます。加えて、民間企業のモラルハザードも見逃せません。日本を代表する一流大手企業や大手銀行で商法違反、背任、増収賄等事件が相次いで報道され、社長や頭取がテレビカメラの前で土下座して謝罪せざるを得ない事件が続発してきました。
第四は、社会システム全般に亘るバブルの崩壊であります。これまでも述べてきたように、責任感の希薄さ、自浄機能の喪失、社会システム機能不全、モラルの退廃は目に余るものがあります。情報化、国際化の流れも速く、このままでは日本の社会システム全ての分野に亘って国際的にも国内的にも適応しがたい状況が相次いでいます。
戦後教育は、特定のイデオロギーにかたまった日教組によって蹂躪され圧倒されてきました。また、戦後占領軍の支配下のもとで制定された憲法や教育基本法は、個人の尊厳や権利については手厚く扱っておりますが、国家や社会に対する義務や日本の伝統や文化については欠落しています。このため、道徳教育や正しい歴史教育は無視され、偏向教育が闊歩し、家庭の崩壊、教師の資質の低下、ジャーナリズムの偏向等この国の社会システムそのものが崩壊の危機にあります。
発想を変えよう〜憲法や教育基本法はこれで良いか
明治維新で江戸幕府から近代統一国家に変革したように、太平洋戦争に敗北して戦後民主化へ取り組んだように今我が国は、二十世紀から二十一世紀への分水嶺、正に大変革の過程にある。国も、行政改革、金融改革、経済改革、産業構造改革、社会保障改革、教育改革など一連の大改革を行おうとの方針を示しています。
しかし、個々の分野での改革では間に合いません。新世紀での我が国のあり方、私たちの生活の姿を展望して、それを目指したトータルな変革を図らなければなりません。すでに平均寿命は八十才代を超えておりますが、社会は依然として人生五十年時代のシステムを糊塗彌縫してきましたが、本質的には古いシステムを引きずったままであります。
そこで発想を転換して、これから社会のニーズはどう変わるのか、社会システムすべての分野での発想の転換と先見性が求められています。
今となっては、システムを変えただけでは駄目で草の根から変える必要があり、その為にも、戦後社会規範の基本を担ってきた憲法や教育基本法を蛮勇を振るって改正する必要があります。国会に憲法調査会が置かれた事は評価すべきですが、一朝一夕には行かない、この国の命運に拘わるものとして、国民の理解と協力を得なければならないと思います。今や、マスコミ等の情報メディアは、世論形成に強力な影響力を持っているので、勇気を持ってその協力を求める必要があります。
自信を取り戻そう
このようなバブルの崩壊に象徴される現代病を克服し、発展させていくためには、まず、戦後の壊滅的な状況を半世紀足らずで最も豊で安全な世界に冠たる日本を築き上げた原動力其の物を探る必要があると思います。物的資源に乏しい我が国が、このような奇跡的発展を遂げ得た最大の理由は、豊富な人的資源の存在にありました。つまり、市場経済、グローバリゼーション等は何れも西洋風の道具立てに過ぎず,これを正しく動かした日本人の資質の高さが在ったことには変わりません。このことは、伝統的な我が国の教育の基が、「儒教」、「四書五経」、柔道、書道、華道といった「道の文化」、恥を知れと言った「恥の文化」、「礼儀」、「汝何を為すべきか」等心の教育に重きを置いたことにありました。さらに、このような歴史的な伝統に「和魂洋才」と言った日本民族の同化力が加わってのことと思います。
敗戦後ドイツは、憲法の制定など重要な問題には一貫して主体的に取り組んでいるのに対し、日本は、占領下の異常な体制下において制定された憲法や教育基本法などに対しても同化の道を選択しました。国家安全基本法等は、自らの問題として主体的に取り組むべきで、周辺地域に遠慮し過ぎてはならない。集団的自衛権の解釈に付いて、内閣法制局言わば役人の見解に総理大臣の考えまで左右されているのは誠に不可解であります。
経済力を落とし、自らの問題を主体的に捉えられなくなった我が国は、当然、国際的な地位や信用を著しく低下させました。クリントン政権は、アジアにおける軸足を日本から中国へ向けるのではないかと見る人もいました。ブッシュ政権は、軸足を中国から日本に移すと思いますが安心している時ではありません。大切なことは、国家的危機の自覚を明確にして、主体的に今何を為すべきか政策目標を国民に示す時であると思います。
政治経済体制として、新保守主義、自由主義が正しいと思いますが、何れの政党も、政治的基盤が脆弱であるので、超党派的視点にたって、体制の確立を急ぐ必要があると思います。自由民主党は、人材が豊富でありますから、日本における新保守主義、自由主義体制のバックボーンになるべきであると思います。その為には、年功序列などを改め、党の運営や人事の刷新などの断行が急務であります。
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