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国会活動/発言一覧 参議院「沖縄・北方問題特別委員会」

第155回国会
2002年11月7日
人権擁護法案(第百五十四回国会内閣提出)(継続案件) 

コメント
■ 参議院法務委員会において、先の通常国会で継続審議となっていた「人権擁護法案」の審議が始まりました。「メディア規制3法案」の1つとして大きく取り上げられている法案です。
■ 本日10時から法務委員会が開催され16時まで質疑が行われました。私がトップバッターで質問に立ちました。持ち時間は1時間です。
■ 私は、「松本サリン事件」の際の誤報による人権侵害など、報道による人権侵害を中心に法務当局の考え方を質しました。






■ 委員長 人権擁護法案を議題といたします。
 本案につきましては先国会において既に趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。

■中川義雄 自民党の中川義雄であります。
 報道では、人権擁護法案はメディア規制三法案の一つとして非常に大きく取り扱っております。私がまとめただけでも、もうこのぐらいのたくさんの報道がされております。ですから、この法案はまるでメディア規制法案みたいな感じで報道されておりますが、私は、この内容をよく見ると、決してそんなものではないと。そういうことで、まずこの法案の全体像を法務大臣に明らかにしていただきたいと思います。

■国務大臣(森山眞弓法務大臣)  人権が尊重される社会を実現するためには、人権教育・啓発に関する諸施策を推進するとともに、現実に起こる人権侵害の被害者に対して実効的な救済を図る必要がございます。ところが、現行の人権救済制度には様々な制度的な限界がございまして、その要請に十分こたえ切れていないということから、そのようなことが人権擁護推進審議会の答申においても指摘されております。
 そこで、人権の世紀と言われる二十一世紀におきまして、真の人権尊重社会を実現するために現行の人権救済制度を抜本的に変革するということを考えて、今、人権擁護法案を御審議いただくということになったわけでございます。
 どうぞよろしくお願いいたします。

■中川義雄 本法案を政府から提出するに至った経緯について、法務当局の見解を伺いたいと思います。

■政府参考人(吉戒修一法務省人権擁護局長) お答え申し上げます。
 少し長い経緯でございますので、長くなりますけれども、お許しいただきたいと思います。
 平成八年の五月に、地域改善対策協議会が政府に対しまして同和問題の早期解決に向けた方策の基本的な在り方について意見具申を行いました。その中で、今後の重点施策といたしまして、あらゆる人権侵害に対する事実関係の調査や被害の救済等の対応の充実強化というものが取り上げられまして、現行の人権擁護制度を抜本的に見直し、二十一世紀にふさわしい人権侵害救済制度を確立するという方向性が示されたわけでございます。
 これを受けまして、平成八年十二月、新しい人権救済制度の在り方等につきまして調査審議いたします人権擁護推進審議会の設置のための法律、人権擁護施策推進法でございますが、これが成立いたしまして、翌平成九年の三月に、この法律に基づきまして法務省に人権擁護推進審議会が設置されたわけでございます。
 この法案につきましては、衆参両法務委員会におきまして、この審議会の答申を最大限に尊重して、答申を踏まえて必要な措置を講ずるよう努力するようにとの附帯決議がなされているところでございます。
 その後、この人権擁護推進審議会におきましては、人権教育・啓発に関する調査審議を終えた後の平成十一年の九月から、新しい人権救済制度の在り方等につきまして本格的な調査審議が進められまして、昨年でございますけれども、平成十三年の五月にこれに関する答申が、次いで昨年の十二月に人権擁護委員制度の改革に関する追加答申がなされたという次第でございます。
 今回お出しいたしております人権擁護法案は、これらの答申を踏まえて立案されたものでございます。

■中川義雄 時間の制約がありますので、なるべく簡潔な答弁をお願いしたいと思います。私も、質問の内容は詳細に事前に通告してありますが、質問の内容はある程度省略して言いますが、答弁もなるべく簡潔にしていただきたいと思います。
 報道などでは、平成十年に我が国が規約人権委員会から受けた勧告に対応して検討が進められたかのように言われておりますが、今の答弁では、平成八年、地対協意見具申に始まったと、こういうことでありますから、規約人権委員会の最終見解と今回の法案の関連について述べていただきたいと思います。

■政府参考人(吉戒修一法務省人権擁護局長) お答え申し上げます。
 先ほど申し上げましたように、今回の人権擁護法案でございますが、当初の出発点は平成八年五月の地対協の意見具申でございます。それを受けて平成九年三月に人権擁護推進審議会が立ち上げられ、その答申に基づいて立案したというものでございまして、今、委員の方から御指摘のございました規約人権委員会からの勧告、これがなされましたのは平成十年の十一月のことでございますので、今回の法案はこの勧告に基づいて立案されたものでないことは明らかでございます。
 しかしながら、勧告に基づいて立案されたものではございませんけれども、その最終見解には内容として十分にこたえる内容になっておるものと考えております。

■中川義雄 人権委員会の独立性は本法案について大きな論点の一つだと考えます。
 なぜ独立性が必要なのか、そしてこの法案ではどのようにそれが確保されているのか、御説明いただきたいと思います。

■政府参考人(吉戒修一法務省人権擁護局長) お答え申し上げます。
 人権委員会は、公権力や報道機関による人権侵害につきましても救済の対象として取り扱いますことから、公正さが確保され、かつ実効性の高い救済措置を講じるという観点からも、また救済機関に対します信頼性を確保するという観点からも、他の行政機関からの影響を排して独立して職務を行う必要性があると考えております。
 そこで、法案では、人権委員会を国家行政組織法第三条二項に基づく独立の行政委員会として設置し、委員長及び委員の任命方法、身分の保障、職権行使の独立性等の保障等によりまして、その職権の行使に当たりましては内閣や所轄の法務大臣などからの影響を受けることがないように高度の独立性を確保することとしているところでございます。

■中川義雄 今般の人権委員会は、いわゆる三条委員会として新たに設けることにまずどのような意義があるのかということをお尋ねします。
 また、これも大きな指摘になっておりますが、人権委員会を法務省に置くこととなっておりますが、この点については、刑務所や入国管理施設を所管している法務省は適当でない、人権委員会を内閣に置くべきであるとの大きな批判もありますが、なぜ法務省でなければならないのかについて説明いただきたいと思います。

■政府参考人(吉戒修一法務省人権擁護局長) 人権委員会をなぜ三条委員会として設けるのか、あるいは人権委員会の設置場所をなぜ法務省にするのかというお尋ねでございます。
 現在、三条委員会といたしましては、御承知のとおり、公正取引委員会ほか五つの委員会がございますが、その中で最後に設けられましたのが昭和四十七年の公害等調整委員会でございます。したがいまして、この人権委員会は正に三十年ぶりに新設される三条委員会、行政委員会ということになるわけでございます。
 行政委員会につきましては、さきの行政改革会議におきましてもその公正中立性や専門技術性等が必要とされる組織と位置付けられておりますけれども、この近年、一定の公正中立性が要求される行政機関につきましてもそのような行政委員会として設置される例がなかったわけでございます。そういうことにかんがみますと、省、庁と並ぶ三条委員会は特に高度の公正中立性が要求される行政機関の組織形態であると考えられまして、人権委員会を三条委員会として設置することは現行の法制下では最大限に独立性を保障したものというふうに評価されるのではないかというふうに考えております。
 次に、人権委員会をなぜ法務省の外局として設置するかということでございますが、これにつきましては以下のとおりでございます。
 まず第一点は、昨年一月に実施されました中央省庁の再編に当たりまして、人権の擁護は国民の権利擁護をその基本的任務といたします法務省において引き続き所掌すべき事務とされ、今後特に充実強化すべきものとして整理されていることがまず挙げられます。
 次に、第二点といたしまして、法務省はかねてから人権侵害に関する調査及び救済措置としての調停、仲裁、訴訟援助、差止め請求訴訟の提起等の職務の遂行のための法律的な専門性を有する職員を擁しておりますとともに、人権救済に関する専門的な知識、経験の蓄積を有すること、この二点が挙げられようかと思います。
 なお、諸外国におきましても、このような独立性を有する国内人権機構を司法省又はこれに相当する行政機関に置く例が少なくございません。例えば、カナダの人権委員会あるいはオーストラリアの人権・機会均等委員会はそれぞれ司法省の所轄の下に置かれておりますし、イギリスの人種平等委員会は内務省の所轄の下に置かれております。
 こういうふうな事情でございます。

■中川義雄 この委員会は最終的な意思を決定する機関でありまして、実際に相談を受けたり人権侵害事件について調査を行うのは事務局が当たると、こう思いますので、そうしますと、この制度を真に実効性あるものにするためには地方事務所の設置や職員の確保など事務局の体制整備を十分していかなければならないと、こう思いますが、その点についてはどのように考えておりますか。

■政府参考人(吉戒修一法務省人権擁護局長) 正に、委員御指摘のとおりでございまして、人権委員会がその所掌事務を適切に遂行し人権救済制度を実効的なものといたしますためには、実際の調査等に従事する委員会、事務局の組織を充実、整備する必要があるというふうに考えております。特に、全国各地で日々生起いたします人権侵害事案に対しまして実効的な救済を可能とするためには、事務局の地方組織の体制を充実させることが重要であるというふうに考えております。
 そういうふうな観点から、平成十五年度のこの法律の施行に向けまして、事務局の体制の整備に努力してまいりたいというふうに考えております。

■中川義雄 いわゆる地方事務所についてなんですけれども、地方法務局へ事務委任を行うということは本委員会の独立性から非常に疑問があるというような声が強いわけでありますが、その点についての見解を伺いたいと思います。

■政府参考人(吉戒修一法務省人権擁護局長) 人権委員会の事務局の組織でございますけれども、中央に人権委員会があり、その下に中央の事務局があり、さらに地方事務所という地方組織を置くというふうに考えております。ただ、地方組織は今のところ全国八ブロックというふうに考えておりますので、その下の更に都道府県単位、失礼、八ブロック以外の県でございますけれども、四十二か所につきましては地方法務局に事務委任をするというふうに考えております。
 その点の問題点を御指摘のことと思います。この地方法務局長でございますけれども、これは人権委員会から委任を受けて処理する地方事務所の事務、これは人権の救済と人権の啓発でございますけれども、この事務につきましては法務大臣ではございませんで、人権委員会の指揮監督を受けるということになっております上、人権委員会事務局の地方機関として設置されます先ほど申し上げました地方事務所、これが地方法務局管内を含めましてブロック管内全域につきまして、公権力による人権侵害事件やマスメディアによる人権侵害事件など、特に中立公正さが要求される事件の調査を主導的に行うことなどを予定しておりまして、地方組織におきましても人権委員会の独立性というものは十分に確保されているというふうに考えております。

■中川義雄 報道の中には、規約人権委員会から警察や入国管理施設での人権侵害の救済を図る独立の機関を作れと勧告を受けたにもかかわらず、自民党と官僚が結託してメディア規制に話をすり替えたなどという報道もあります。
 しかしながら、先ほどの説明では、検討の発端はあくまでも規約人権委員会からの勧告ではなく、平成八年の地対協意見具申であるとのことでしたが、また今回の法案は、人権擁護推進審議会において人権侵害一般の救済について十分な時間を掛けて検討した結果を反映したものであるということであります。自民党と官僚が結託して自分たちの都合の悪い報道を規制するために画策したというようなことはこの経緯からはあり得ないと考えるわけであります。
 審議会の答申においては、メディアにある一定の人権侵害については自主規制の取組を尊重しつつ、調停、仲裁、勧告・公表、訴訟援助といった手法で積極的な救済を図るべきであるとなっています。法案にはこのような答申の趣旨がどのように反映されているのか、そして審議会においてなぜこのような結論に至ったのか、結論に至るまで報道による人権侵害に関しどのような議論がなされたのか、説明していただきたいと思います。

■政府参考人(吉戒修一法務省人権擁護局長) 先ほど委員御指摘のとおり、政府と与党が結託してメディア規制のためにこういうふうな法案を作ったということは全く事実に反することでございます。これ、まず最初に申し上げたいと思います。
 この法案に至った経緯でございますけれども、特に報道関係の被害の救済についての検討の経緯でございますが、人権擁護推進審議会におきましては、平成九年の五月から諮問第一号、これは人権教育・啓発に関する施策の推進に関する基本的事項でございますが、これについて調査審議を開始し、当初、我が国の人権侵害の状況につきましての調査審議を重ねていましたところ、当時、平成九年当時でございますが、既に御案内のとおり、東電のOL殺害事件でありますとか、あるいは神戸の連続児童殺傷事件、あるいは東京で起きました弁護士夫人殺害事件といった刑事事件が発生いたしました。これらの事件をめぐる報道機関の報道、取材によりまして著しい人権侵害がもたらされたことから、犯罪報道における人権侵害の問題も我が国における重要な人権問題として審議会において取り上げられることになったものと承知しております。
 その後、審議会におきましては、平成十一年七月に先ほどの諮問第一号についての答申を行いました後、諮問第二号、人権救済に関する施策の充実に関する基本的事項でございますが、これについての調査審議の中で、犯罪被害者の方あるいはマスコミの関係者の方などからのヒアリングも行いながら検討を重ねました結果、犯罪報道による一定の人権侵害につきましては積極的な救済が必要との結論に達しまして、その調査方法につきまして更に強制調査権を認めるか否かにつきまして審議会の中で意見が分かれましたけれども、その後の中間取りまとめ、これは平成十二年に行いましたけれども、中間取りまとめに対するパブリックコメント、あるいは平成十三年に行いました地方公聴会での意見等を踏まえた議論の結果、表現の自由、報道の自由の重要性に配慮いたしまして、報道機関に対する調査につきましては任意のものに限るとの結論に達したものと承知しております。

■中川義雄 この法案をマスコミ規制法案として批判する側から、そもそも報道機関による人権侵害については特別の救済対象としなければならないほどの実情がないんだと、すなわち立法事実がないと指摘する声も大きいわけでありますが、このような指摘についてどのように考えておりますか。

■政府参考人(吉戒修一法務省人権擁護局長) これにつきましては、平成十二年の九月に総理府が実施いたしました犯罪被害者に関する世論調査の結果がございます。
 これによりますと、犯罪の被害者や遺族につきまして、犯罪による直接的な被害のほかに最も問題だと思うものは何かとの質問に対しまして、精神的なショックや苦痛との回答に次ぎまして、マスコミの取材や報道によるプライバシーの侵害との回答がなされております。さらに、犯罪被害者の対策といたしまして政府に力を入れてほしい対策は何かとの質問に対しまして、捜査や裁判の過程における犯罪被害者への配慮、これは五八・一%ございましたが、という回答に次ぎまして、マスコミからのプライバシーの保護、これは五六・七%の回答という回答がされているところでございます。
 この世論調査において示された政府に対する要望のうち一番目のもの、捜査や裁判の過程における犯罪被害者への配慮につきましては、既に平成十二年に刑事訴訟法の一部改正と犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律などが制定されておるところでございます。こういうふうな手当てがなされておりますけれども、二番目のマスコミからのプライバシーの保護につきましては、正に本法案によりましてそのニーズにこたえようとするものでございます。
 また、立法事実に関連して敷衍させていただきますと、犯罪報道に関しまして、その報道、取材の在り方が問題とされた最近の著名な事例を拾いますと、まず報道内容に関するものでは、先ほど申し上げましたけれども、神戸連続児童殺傷事件、これは平成九年、それから東電OL殺害事件、平成九年、堺通り魔事件、平成十年、それから沖縄米兵暴行事件、平成十二年がございますし、取材行為に関するものでは、例えば弁護士夫人殺害事件、平成九年、和歌山毒カレー事件、平成十年、桶川ストーカー殺人事件、平成十一年、京都小学生殺害事件、平成十一年、西鉄バス乗っ取り事件、平成十二年、大阪池田小学校児童殺傷事件、平成十三年などがございまして、このような犯罪報道被害の実情にかんがみますと、社会の耳目を集める犯罪が発生すれば同様の報道被害が生じる状態がなお依然として継続している状況にあるというふうに考えております。

■中川義雄 ただいまの答弁を聞きましても、私自身、その事件一つ一つ思い出すたびに大変な問題だな、被害者の立場に立つとこれがいかに大きな問題であるかということがよく理解できるわけです。
 このような重大事件が発生するたびに犯罪被害者のプライバシーが非常に侵されている、そのような報道がもう繰り返し繰り返しなされていると。その結果、被害者の方は犯罪そのものによる被害を被っている以上に、追い打ちを掛けるように二次被害というべき被害を報道によって受けていると言っても過言ではないと思うわけであります。
 このような犯罪被害者が受けてきた報道被害についてどのように法務当局としては考えているのか、お聞きしたいと思います。

■政府参考人(吉戒修一法務省人権擁護局長) ただいま委員御指摘の報道被害につきましては、昨年五月に人権擁護推進審議会からいただきました「人権救済制度の在り方について」の答申の中でこのようなくだりがございます。報道によるプライバシーの侵害、名誉毀損、過剰な取材による私生活の平穏の侵害等の問題がある。特に、犯罪被害者やその家族のプライバシーを侵害する報道や行き過ぎた取材活動は、二次被害とまで言われる深刻な被害をもたらしているという指摘がなされているところでございます。
 こういうふうな被害に遭われた方につきましてはその大変な御苦労がしのばれまして、心からお気の毒に思っております。新しい人権救済制度の下におきまして、このような被害に苦しむ方を一人でもなくすことができればよいというふうに考えております。
 

(次ページへ続く)
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