国連改革に関するIPU会合 参議院代表団への参加概要
国連改革に関するIPU会合派遣参議院代表団としての報告
1.会合の概要
2.会合参加者からの主な意見と勧告
3.終わりに
国連改革に関するIPU会合 参議院代表団への参加概要
(日程:平成18年6月26日〜27日・場所:ニューヨーク)
・ IPU(列国議会同盟)会合に参議院代表団として出席のため渡米しました。IPU会合は各加盟国が代表として指名した国会議員をもって構成されます。
・ 何ら合意に達していない国連事務局改革に関し、今回IPUのイニシアチブによりニューヨークに責任ある立場で議論できる議会人を結集し、国連の現状について議論する機会を設けることとなり、私が日本の代表団に指名されました。
・ 国連の現状、在り方、改革等について、国連高官及び各国の国連代表部大使と意見交換を行いなした。今回の参加国は他に、エジプト・ヨルダン・ノルウェー・南アフリカ、スウェーデン ・ケニア、メキシコでした。
・国連総費用の19.5%を負担している日本の貢献度を訴え、資金運営の一層の透明化などを提案しました。会合では世界的に南北対立・格差が激しくなっていることも実感しました。
国連改革に関するIPU会合派遣参議院代表団としての報告
団長 参議院議員 中川義雄
国連改革に関するIPU会合は、2006年6月26日(月)及び27日(火)、日本、エジプト、ヨルダン、ケニア、ノルウェー、南アフリカ、スウェーデン及びメキシコの八か国の議員が参加してニューヨークの国連本部及び周辺各所において行われた。
本会合は、カジーニIPU議長(イタリア)が6月上旬に訪米し、各国の国連常駐代表及び国連高官との会談を行った際、各国代表等より、今期の国連予算は国連事務局改革の方向性が明確にならない限り六か月を超えた部分は凍結とされている(本年6月末に期限を迎える。)にもかかわらず、当時何ら合意に達していない改革の先行きに懸念が表明され、IPUのイニシアチブによりニューヨークにハイレベルの議会人を結集し、国連の現状について議論する機会を設けるよう提案がなされたことを受け、急遽開催が決定したものである。極めてショートノーティスな中での参加に対し、ジョンソンIPU事務総長より会合の前後に重ねて謝意が示された。
本会合の経過及び結論文書の詳細については「国連改革に関するIPU会合概要」に譲ることとし、本報告書ではその概要を報告する。
1.会合の概要
会合は、IPUがアレンジした日程に沿って、議員団が各アポイント先(計七か所)に出向き、IPUのニューヨーク在駐代表であるフィリップ大使(ルーマニアの元ジュネーブ政府代表部大使)が司会進行を務めて、自由討論方式で進められた。フィリップ大使は、当初、各会談ごとに参加議員の中からスピーカーを定め、議員団の考え方を申し入れる(勧告する)方式を提案したものの、各議員の自由な意思表明が尊重されるべきだとの意見が大勢を占め、結局、自由討論方式が採用された。
今回の会合の趣旨について、会合の冒頭でジョンソンIPU事務総長は、過去二回の世界議長会議において国連と一層緊密に協力していくことが確認されているが、国連事務総長の予算支出権限の期限を6月末に控え、今こそIPUが国連に対し重要な貢献を行い得ると説明した。
国連予算については、昨年の予算審議において、通常どおり二か年予算を承認するが、通常とは異なり、事務総長の当初の支出権限を予算全体の四分の一相当額(半年分)に止めるという支出キャップ方式が採択された。これに対し、先進国は支出キャップを外すためには国連のマネジメント・事務局改革の前進が重要であるとの立場を取り、途上国は改革の前進とは関係なく支出キャップを外すよう主張し、対立する状況が続いていた(注、6月30日、国連総会はキャップを外す決議を採択。日米豪は留保を表明)。
今回の会合では、途上国の代表(G77グループ)及び先進国の代表(JUSCANZグループ)双方から説明を聴取したほか、国連側で本件について深く関わっている国連総会議長、行財政改革を所管する第五委員会の委員長及び事務総長の下で国連改革全般を所管する事務総長補から、主に改革論議の現状・進展状況について説明を聴取し、議論を行った。
参加者はおおむね各国政府の立場に沿って意見を展開した。中でも南アフリカの議員は、国連予算の支出キャップ方式自体、先進国の横暴であると決め付け(これに対して、私は「支出キャップ方式自体は昨年全会一致で採択されたものではないか。」と疑問を呈したが、明確な回答はなかった)、「金を多く出せば何でもできるというわけではない。」、「富裕国も貧困国も同じ一票に変わりはない」と声高に主張した。
また、同議員は、私が安保理改革の重要性を訴えた際、「あなたは四か国(G4)のみが安保理常任理事国になればいいと考えているのか。そうでないとすれば何か国に拡大すべきと考えているのか」と詰め寄る場面もあった 。(これに対して私は、常任理事国六か国、非常任理事国四か国程度を拡大し、当然その中にはアフリカの国も入るし、南アも候補国と考える旨応答した)
私は、二倍以上の経済規模を持つ米国の国連分担金に比して日本が19.5%という非常に多額の拠出を行っていることに注意を喚起しつつ、「日本は戦後復興の過程で貧困の苦しみを誰よりも理解しており、金を多く出せば何をやってもいいなどとは考えてもいないし、そのように恩を着せたこともないはずである。日本国民は誰よりも平和を希求しており、国連に対する期待は大きく、正当な支出がなされている限り決して額の大きさに不満を訴えることはない。しかし、多くを出す者として、その使い道に大きな関心を寄せるのは当然であろう」と述べた。こうした私の主張に反する者はいなかった。その後も南ア等の議員は自説を展開したが、日本に矛先を向けることはなく、先進国一般というよりも米国一国を念頭に置いた発言と見受けられた。
議論は、予算に関するキャップ問題又は事務局・マネジメント改革に絞ることなく、安保理改革等を含め焦点がやや拡散した。議論の中で、いかにして先進国と途上国の対立を乗り越えることができるか、と自問する場面はあったものの、具体的な方策を考案するには至らず、結局のところ自国の主張が繰り返されるにとどまった。会合全体を通じてIPUとして具体的な結論を引き出すことは難しく、予算執行期限の6月末を前にして緊急メッセージを発することはできなかった。
2.会合参加者からの主な意見と勧告
本会合を終えて、IPU事務局において取りまとめた会合参加者からの主な意見と勧告の概要は次のとおりである。IPUはこれらを各国の議会及び今回会合を持った国連高官、各国政府代表部に対して送付した。
【一】主な意見
(1) 国連は世界の人々から依然として十分理解されているとは言えず、その活動は十分な評価を得ていない。
(2) 国連における意志決定は、本来在るべき代表性及び包括性を欠いている。
(3) 安保理は、今日の地政学的な現実を反映していない。また、あまりにも強力な権限を持っている。その見直しが以前に増して必要とされている。
(4) マネジメント改革が国連の正統性及び有効性の改善のための鍵となる。しかし、現在のところ、政治的論争の中で泥沼にはまっている。
(5) 浪費と重複を避けるため、すべての意志決定機関及びその活動の見直しが必要である。しかし、その進め方について隔たりがある。
(6) 国連の開発活動の一貫性を改善することが極めて大きな組織的課題である。
(7) 議会の関与
世界の議会の首脳は、国連が現在取り組んでいる改革アジェンダが短期間のうちに完了することはないものと十分認識している。また、議論を前進させるために議会がなし得る貢献を過大評価しているということもない。外交政策に関して行政府の優位を定める憲法上の特権を尊重している。さはさりながら、選挙民の委任を受けた国会議員のプレゼンスによって、包括的な改革プロセスの成功を促進する方法がいくつか存在する。今回の議会ミッション中に合意された勧告は以下のとおりである。
【二】勧告
(1) 議会は、国連改革の状況について、より一層積極的に関心を持つべきである。議会の常任及び特別委員会は、国連改革について議論を行うため、より一層体系的に関係大臣、国連高官、市民社会代表等からのヒアリングの機会を持つべきである。
(2) 議会は、国連の主要課題に関する自国政府の立場について、一層の情報提供を求めるべきである。従来からの審議方式に加えて、国連常駐代表からのヒアリングを定期的に持つこともできよう。一部の国で既に行われているように、常駐代表の指名は議会にかけられるべきである。
(3) 各国議会は、国連の活動全般、特に国連改革に関する自国政府の立場について、一層認識を深める必要がある。このためには国連と議会の間のよりよい情報の伝達を必要とする。国連からの情報はより体系的に議会に届けられる必要がある。IPUは、国連と協力してこの変革の手助けをするよう求められている。
(4) 特に開発途上国の議会においては、現地の国連代表を通じて各国レベルで国連との関係強化を志向すべきである。議会は、各国政府が国連の支援を受けて作成する開発戦略に一層関与すべきである。また、現地の国連の計画について、より定期的及び包括的に情報提供を受けるべきである。
(5) 議会人は、日常的に国民及び利益団体と共に活動しているところ、国連の信頼を取り戻すことに資する国連改革に対する各国・各地方の支持を構築するため、一層積極的な役割を果たすべきである。
(6) 国連の拠出金問題について、多額の拠出者がより多くの発言権を期待するという自然な流れを埋め合わせるために何らかの創造的な思考が求められている。各国が拠出の絶対額を増やすこともできるが、すべての国の拠出額は負担能力に応じて定められている。活動の場を平準化するため、議会は、拠出金と並んで国連の活動の代替的な資金源となるアイデアを検討すべきである。議会は、納税者のお金の管理と予算決定の権限を持っており、この重要な問題を議題とすべきである。
(7) 議会は、国連改革の下で新たに創設された組織の活動を支援するための価値ある貢献をなすことができる。IPUはそのプロセスを支援するよう求められている。議会は、国連改革においてジェンダー平等問題が適切に対処されるようにするため、重要な役割を果たすべきである。ジェンダー主流化への組織的な関与により、議会及びIPUはこのプロセスに大きな貢献を行うことができる。
(8) 国連加盟各国は、国連総会その他の主要な国連の会議への代表団に、国会議員をより体系的に組み入れるよう努めるべきである。議会人の関与により、交渉と国内における実施の関係を現実的で実践的で一貫したものとし、最終的に国際公約から便宜を受ける国民とのリンクを強化する。
(9) 前項に関連して、IPUは、国連の優先課題について議論するための議会会議を国連本部で開く慣行を強化及び発展させるべきである。これにより、国連の現実を各国議会に近づけ、主要な国連プロセスに重要な議会からのインプットを行うことになる。
3.終わりに
予算に関するキャップ問題に関する交渉が大詰めを迎える中で、いずれも多忙なスケジュールの合間を縫っての会談となったが、会談した国連高官及び各国政府代表とも一様に、この重要な時期に各国の議員が国連改革に関心を持ってくれることは大変ありがたいことと述べた。IPUは、本会合の議論の模様を報告書として各国議会に配布し、多少なりとも各国議員の国連改革に関する関心を高めるという啓蒙効果を期待している。この点で、今回ややもすれば途上国サイドに偏りかねなかった議論の流れに対して、日本の立場を明確に打ち出してくさびを打ったことは、我が国にとって有意義なことであったと思料する。